小さな予算で作られ、完成後しばらく眠っていた映画が、監督と主演俳優の人生を一気に変えていく物語
公開後にどんどん大きくなった小さなホラー映画
#12026年9月。
#2Curry BarkerとInde Navarretteを取り巻く景色は、少し前とはまるで違っていた。
#3Barkerが監督した「Obsession」は、世界興行収入でおよそ5億600万ドルに達していた。
#4もともとの製作費は約75万ドル。
#5巨大なフランチャイズ作品でもなければ、スターを何人も並べた大作でもなかった。
#6それでも映画はFocus Features史上最大級の成功へと膨らんでいった。
#7Navarretteも同じだった。
#8「Obsession」でNikkiを演じた彼女はBest ActressのOscar campaignに入り、その先にはMarvelの「X-Men」でRogueを演じる仕事まで待っていた。
#9BarkerもBest Director、Original Screenplay、Film Editingなどでcampaignの対象になっていた。
#10ただし、ここで時間を少しだけ巻き戻す。
#11すると全然違う風景が見えてくる。
#12BarkerはStarbucksで働きながら、小さな映画を作っていた。
#13Navarretteはすでに「Obsession」の撮影を終えていたのに、その後およそ1年半、次の俳優仕事がなかなか決まらなかった。
#14家賃を払うために犬を散歩させ、ゲーム配信もしていた。
#15奇妙なのは、その時点ですでに「Obsession」が存在していたことだ。
#16二人の人生を変える映画は、もう撮り終わっていた。
#17ただ、まだ誰もそのことを知らなかった。
#18BarkerはAlabamaで育った。
#19子どものころからホラー映画が好きで、高校ではfilm clubを作り、演劇にも参加し、カメラやレンズにも夢中になった。
#2018歳になるとLos Angelesへ向かい、演技を学んだ。
#21しかしLos Angelesに来たからといって、翌日から映画監督になれるわけではない。
#22生活費が必要だった。
#23BarkerはStarbucksで働いた。
#24そして仕事の外で映画を作った。
#25このころ知り合ったのがCooper Tomlinsonだった。
#26二人はfilm schoolで出会い、comedyとhorrorを混ぜた動画を作り、ネットに投稿するようになる。
#27最初から大量の視聴者がいたわけではない。
#28数百回しか見られないこともあった。
#29それでも、また作った。
#30もう一本。
#31さらにもう一本。
#32重要だったのは、バズることより先に「作り終える」という習慣を身につけていたことだった。
#33Barkerにとって映画は、誰かが予算をくれた瞬間に始まるものではなかった。
#34友人がいる。
#35カメラがある。
#36週末がある。
#37なら、作れる。
#38そうやって積み重ねた小さな作品の一つが、ついに業界の人間の目に入った。
#392023年、Barkerは約2,000ドルで短編ホラー「The Chair」を作った。
#40最初から全員に理解された作品ではなかった。
#41table readの段階では、周囲の反応も良いものばかりではなかった。
#42でもBarkerは、頭の中にある奇妙さは完成させてみなければ伝わらないと思っていた。
#43だから作った。
#44そしてネットに公開した。
#45その作品を見つけたのがTea Shop Productionsのproducer、James Harrisだった。
#46Harrisが最初に考えたのは、「The Chair」を長編にすることだった。
#47Barker自身も、その長編版の脚本を書いていた。
#48普通なら、その話にすぐ乗っても不思議ではない。
#49何年も小さな作品を作り続けてきた若いfilmmakerに、ついに長編の入り口が現れたのだから。
#50ところがBarkerは、そこで別の作品を持ち出した。
#51「Obsession」だった。
#52誰かに愛されたい。
#53その願いを、もし本当に叶えられたらどうなるのか。
#54愛されることを待つのではなく、相手の気持ちそのものを変えられたらどうなるのか。
#55その話をBarkerはHarrisにpitchした。
#56Harrisは興味を示した。
#57こうして「The Chair」によって開いた扉を、Barkerは「Obsession」を持って通ることになった。
#58「Obsession」の中心にいるBearは、Nikkiを愛している。
#59少なくとも本人はそう思っている。
#60しかしBearは、彼女が自然に自分を好きになるのを待たない。
#61彼の前にOne Wish Willowという奇妙なものが現れる。
#62枝を一本折り、願いをかければ叶う。
#63Bearは願う。
#64Nikkiが自分を愛してくれるように。
#65そして願いは叶う。
#66そこから映画が壊れ始める。
#67Barkerにとって重要だったのは、Bearを完全な被害者にしないことだった。
#68Bear自身が選んでいる。
#69他人の感情を、自分の欲望のために変える。
#70その行為が物語の始まりにある。
#71ところが製作の途中、もっと大きな予算を得られる可能性が出てきた。
#72およそ200万ドル規模。
#73ただし条件があった。
#74Bearを、もっとheroicな人物に変えてほしい。
#75Barkerにとって、それは表面的なキャラクター調整ではなかった。
#76Bearをきれいな主人公にすれば、映画そのものが違うものになる。
#77「愛してほしい」という気持ちの中に、どれほど身勝手な欲望が含まれうるのか。
#78そこを曖昧にしたくなかった。
#79Barkerは大きな予算を選ばなかった。
#80だからといって、少ない予算だったから成功したわけではない。
#81ただ一つ確かなのは、Barkerが「より大きく作れること」と「自分が作りたい映画を作れること」を同じだとは考えなかったことだった。
#82「Obsession」の製作費は約75万ドル。
#83撮影はおよそ20日間。
#84Barkerは脚本を書き、監督し、編集まで担当した。
#85巨大な怪物も必要ない。
#86大規模な戦闘もない。
#87この映画で怖いのは、一人の人間が別の人間の愛情を支配しようとすることだった。
#88そして、その欲望を目に見える形にしてくれるのがOne Wish Willowだった。
#89映画を撮っていたころ、この小道具はまだ単なる映画の中のアイテムだった。
#90後になって本物の商品として売られ、人々が欲しがるものになるとは誰も知らない。
#91映画自体がどこまで行くのかも分からなかった。
#92まずは、Nikkiを演じる人間が必要だった。
#93Inde Navarretteは、まったくの無名ではなかった。
#94「13 Reasons Why」に出演し、「Superman & Lois」ではSarah Cushingを演じていた。
#95すでにテレビの撮影現場を経験している俳優だった。
#96ただ、「Obsession」のNikkiは違う種類の役だった。
#97単純な「怖い彼女」にしてしまえば簡単だったかもしれない。
#98しかし映画が進むほど、Nikkiの中では愛情、依存、執着、怒り、恐怖が混ざっていく。
#99人間らしさを残したまま、不穏になっていかなければならない。
#100Navarretteはaudition tapeを送った。
#101Zoom readがあり、chemistry readが続いた。
#102そして役を手にした。
#103Barkerは撮影でかなり細かい監督だった。
#104Navarretteが覚えているあるシーンでは、23テイクまで撮ったという。
#105予算が小さいから、早く終わらせる。
#106そういう撮り方ではなかった。
#107Barkerには「ここだけは必要だ」と思う瞬間があった。
#108Navarretteは、その繰り返しの中でNikkiを見つけていかなければならなかった。
#109一方でBarkerは、何が何でも最初の計画を変えない監督でもなかった。
#110Nikkiの結末をめぐっては、Navarretteの演技を見たことが最終的な判断に影響した。
#111物語の中心は守る。
#112しかし、カメラの前で予想以上のものが生まれれば変える。
#113その両方が、Barkerの中にあった。
#114やがて撮影は終わった。
#115しかしNavarretteの人生は、まだ何も変わらなかった。
#116「Obsession」は完成していた。
#117Nikkiもそこにいた。
#118Navarretteの演技も、すでにフィルムの中に存在していた。
#119しかし観客はまだ見ていない。
#120そのあとNavarretteは、およそ1年半にわたって新しい俳優仕事をほとんど得られなかった。
#121auditionは続けた。
#122でも決まらない。
#123俳優として次の仕事が来なくても、家賃は待ってくれない。
#124Navarretteは犬の散歩をした。
#125ゲーム配信もした。
#126もともとgamingは好きだった。
#1272022年には自分でgaming PCを組んでいたくらいだった。
#128だからゲーム配信自体が突然始めたものではない。
#129それでも、その時期の配信は未来のスターがファン向けに行う余裕のある活動ではなかった。
#130生活を続けるための一部だった。
#131このころ、Navarretteはすでに「Obsession」でNikkiを演じ終えている。
#132のちにOscar campaignの対象になる演技を、もう撮り終えている。
#133それなのに、次の仕事は決まらない。
#134映画が世に出ていない以上、その演技はまだ存在しないのとほとんど同じだった。
#135Navarretteだけではなかった。
#136映画そのものも待っていた。
#1372025年。
#138「Obsession」はToronto International Film FestivalのMidnight Madnessで上映された。
#139Barkerたちは、ようやく大勢の観客と一緒に自分たちの映画を見ることになった。
#140すると、面白いことが起きた。
#141同じ場面でも、ある観客は笑う。
#142別の観客は怖がる。
#143自分たちが細かく作り込んだ映画が、観客の前に出た瞬間に別の生き物になる。
#144Barkerはそれを目の前で見た。
#145そして上映後、業界が一気に動いた。
#146連絡が次々に入った。
#147複数のdistributorが映画に興味を示した。
#148約75万ドルで作った小さな映画が、突然bidding warの対象になった。
#149最終的にFocus Featuresが、およそ1,500万ドル規模の取引で配給権を獲得した。
#150Starbucksで働きながら映画を作っていたころのBarkerには想像しにくい数字だった。
#151しかし、まだ成功は完成していない。
#152映画会社が高く買うことと、一般の観客が映画館に足を運ぶことは別だからだ。
#153「Obsession」にはもう一度、発見される必要があった。
#1542026年5月。
#155「Obsession」は北米の映画館で公開された。
#156初週末の興行収入はおよそ1,720万ドル。
#157製作費を考えれば、それだけでも十分すぎるほどの成功だった。
#158普通なら、その翌週から数字は下がる。
#159最も見たい人は初週に来る。
#160話題作ほど初動に観客が集中する。
#161だから2週目は減る。
#162ところが「Obsession」は増えた。
#1632週目のほうが観客が多かった。
#164さらに、その勢いは一度の偶然で終わらなかった。
#1653週目も強かった。
#1664週目も大きく崩れなかった。
#167公開された映画が、時間とともに観客を失うのではなく、新しい観客を連れてきていた。
#168初週末の成功よりも、こちらのほうが異常だった。
#169いったい誰が、新しい観客を映画館に送り込んでいたのか。
#170その一部は、すでに映画を見た観客自身だった。
#171「Obsession」以前に、BarkerとTomlinsonは「Milk & Serial」という作品を作っていた。
#172製作費は約800ドル。
#17380万ドルではない。
#174800ドルだった。
#175従来の配給先を見つけられず、最終的にYouTubeで無料公開した。
#176すると映画は、あとから観客を増やした。
#177人から人へ渡っていった。
#178数百回では終わらなかった。
#179多くの人が見つけた。
#180この経験だけで「Obsession」の5億ドル級ヒットを説明することはできない。
#181しかしBarkerは、一つだけすでに知っていた。
#182ネット上では、観客が映画の終着点ではない。
#183観客自身が次の観客を連れてくることがある。
#184「Obsession」では、その仕組みが映画館と結びついた。
#185誰かが映画を見る。
#186TikTokでeditを作る。
#187memeにする。
#188comedy skitを撮る。
#189Nikkiの話をする。
#190One Wish Willowをネタにする。
#191まだ映画を見ていない人が、それに遭遇する。
#192「何の話だろう」と思う。
#193そして映画館へ行く。
#194そこでまた新しい観客が生まれる。
#195映画館からインターネットへ。
#196インターネットから映画館へ。
#197「Obsession」はその間を往復し始めた。
#198Focus Featuresも、その流れを利用した。
#199映画の中のOne Wish Willowを、本当に買える商品にした。
#200websiteを作った。
#201commercialを作った。
#202jingleまで用意した。
#203商品はすぐに売り切れた。
#204ファンはNikkiにtext messageを送るような体験もできた。
#205Navarretteが録音したNikkiのvoiceが返ってくる仕掛けも作られた。
#206billboardも、単に映画のタイトルを大きく見せるだけではなかった。
#207映画の世界が現実へ漏れ出してきたように見せた。
#208普通の広告は「この映画を見てください」と言う。
#209「Obsession」のcampaignは、もう少し違っていた。
#210観客に「この映画で遊んでください」と渡した。
#211だから映画を見たあとにも素材が残った。
#212投稿できる。
#213誰かに送れる。
#214真似できる。
#215冗談にできる。
#216もちろん、marketingだけで5億ドルは説明できない。
#217観客が映画そのものを気に入る必要がある。
#218TIFFで業界の信頼を得たことも大きかった。
#219Focusが全国規模で公開したことも必要だった。
#220Barkerがもともとonline audienceの動きを理解していたことも無関係ではない。
#221どれか一つが魔法の答えなのではない。
#222複数のものが同時にかみ合った。
#223「Obsession」の動きを単純化すると、こんな循環が見える。
#224映画を見る。
#225誰かに話す。
#226ネットに投稿する。
#227まだ見ていない人が投稿を見る。
#228映画館へ行く。
#229その人がまた投稿する。
#230つまり、
#231映画会社から観客へ、
#232で終わらない。
#233映画から観客へ。
#234観客からネットへ。
#235ネットから別の観客へ。
#236そしてまた映画館へ。
#237そのloopができた。
#238すべてのチケットがTikTokによって売れたわけではない。
#239すべての観客がmarketingに反応したわけでもない。
#240ただ、「Obsession」は公開後に話題が減るのではなく、話題そのものが新しい人を呼び込む状態に入った。
#241だから初週末の約1,720万ドルより、そのあとが重要だった。
#242映画は公開された瞬間に最大になったのではない。
#243公開されてから大きくなった。
#244最終的に世界興行収入は約5億600万ドルまで伸びた。
#245そして、そのころになってようやく、完成してからずっと待っていたNavarretteの時間も動き出す。
#246「Obsession」が公開される前、Navarretteは次の仕事を取れずにいた。
#247しかし公開されると、観客はNikkiを見た。
#248その演技について話し始めた。
#249Nikkiは映画の人気を支える中心的な存在の一つになった。
#250そしてNavarretteの立場は、短期間で変わっていった。
#251Focus Featuresは彼女をBest ActressのOscar campaignに載せた。
#252ここは重要だ。
#253まだOscar nominationを得たわけではない。
#2542027年のAcademy Awardsに向けて、候補入りを目指すcampaignの段階だ。
#255それでも数か月前との落差は大きい。
#256俳優仕事が決まらず、犬を散歩させて家賃を払っていた人が、いまはAcademy votersに見てほしい演技として売り込まれている。
#257さらにNavarretteはMarvelの「X-Men」でRogue役に決まった。
#258「Obsession」を撮ってから次の仕事が来なかった時期と比べると、入れる部屋の大きさそのものが変わった。
#259あの演技はずっと同じだった。
#260変わったのは、ようやく世界が見たことだった。
#261Barkerの未来も、一気に大きくなった。
#262次のoriginal horror「Anything But Ghosts」ではCooper Tomlinsonと再び組んだ。
#263しかも、その作品には「Obsession」の世界を思わせる小さなつながりも存在する。
#264「Obsession」を踏み台にして完全に別の場所へ行くのではなく、自分たちが作った世界から先へ進もうとしている。
#265一方で、A24の「The Texas Chainsaw Massacre」に関わる機会も得た。
#266かつてStarbucksで働きながら友人たちと小さなhorrorを作っていた人が、今度は有名なhorror IPを扱う側にいる。
#267規模は大きくなった。
#268選択肢も増えた。
#269しかしBarkerは、成功したからといってIPだけを作る人間になりたいわけではないと語っている。
#270彼をここまで連れてきたのはoriginal movieだった。
#271その姿勢を見ると、昔200万ドルの案を断った判断がもう一度思い出される。
#272お金を断ったから成功したわけではない。
#273ただ、あのころからBarkerは、規模が大きくなることより「何を作るか」を先に考えていた。
#274成功後も、その順番は完全には変わっていない。
#2752026年9月。
#276Universal Studios HollywoodのHalloween Horror Nightsに、Nikkiが現れた。
#277映画の中で見た血まみれの姿。
#278印象的なbrick。
#279観客が知っている動き。
#280ファンは近づき、セリフを口にし、映画の中にいたキャラクターを現実で体験する。
#281One Wish Willowもそうだった。
#282Nikkiもそうだった。
#283「Obsession」は映画館のスクリーンだけに閉じ込められなくなった。
#284商品になる。
#285投稿になる。
#286memeになる。
#287theme parkのキャラクターになる。
#288撮影当時、Navarretteは自分が演じたNikkiがそこまで行くとは知らなかった。
#289そもそも、次の仕事が来るかどうかさえ分からなかった。
#290それが今では、自分が演じたキャラクターを別の誰かが再現し、観客がその細部まで知っている。
#291映画が文化の中に入ったことを、これ以上分かりやすく見せる光景もあまりない。
#292この成功を「若い監督と主演俳優が夢をつかんだ話」だけにすると、現実よりきれいになりすぎる。
#2932026年8月、executive producerのLeonora Ann DarbyがTea Shop ProductionsとJames Harris、Mark Laneらを相手に訴訟を起こした。
#294Darbyは、自分が映画の製作や完成に重要な役割を果たし、利益の一部を得る権利があったにもかかわらず、適切に支払われていないと主張している。
#295相手側はその主張を否定している。
#296現在の時点で、裁判所がどちらの説明を事実と認定したわけではない。
#297だから、この件をすでに決着した事実のように扱うことはできない。
#298ただ一つ言えるのは、約75万ドルの映画が5億ドル規模に成長したことで、「この成功を誰が作ったのか」という問いそのものが重くなったということだ。
#299映画は監督一人では作れない。
#300俳優一人でも作れない。
#301producerがいる。
#302crewがいる。
#303distributorがいる。
#304marketing teamがいる。
#305そして最後には、観客がいる。
#306「Obsession」が巨大になればなるほど、その成功に関わった人の数も見えてくる。
#307Barkerをもう一度見る。
#308彼は、誰かが長編を任せてくれるのを何もせずに待っていたわけではない。
#309Starbucksで働きながら映画を作った。
#310「The Chair」を作った。
#311「Milk & Serial」を作った。
#312また次を作った。
#313彼にとっての「待つ」は、作り続けることだった。
#314次にNavarretteを見る。
#315彼女はすでにNikkiを演じ終えていた。
#316しかし映画が公開されていない以上、その演技が次の仕事につながることはなかった。
#317だからauditionを続けた。
#318犬を散歩させた。
#319game streamをした。
#320そして映画を見る。
#321「Obsession」は完成していた。
#322Barkerの演出は終わっていた。
#323Navarretteの演技も終わっていた。
#324編集も終わっていた。
#325それなのに、その映画が持つ未来だけがまだ始まっていなかった。
#326監督が待っていた。
#327俳優が待っていた。
#328映画も待っていた。
#329三つの時間が、別々に止まっていた。
#330TIFFで、まず業界が映画を見つけた。
#331約75万ドルの映画に、約1,500万ドル規模の価値を見いだした。
#332それでも、まだ足りなかった。
#3332026年5月。
#334次に観客が見つけた。
#335初週末に約1,720万ドル。
#336そして2週目にさらに増えた。
#337通常なら下がるところで上がった。
#338そこから映画はネットへ戻り、新しい観客を呼び、その観客がまた別の人を呼んだ。
#339だから「Obsession」の成功を、一つのviral videoで説明することはできない。
#340一つの広告でもない。
#341TIFFだけでもない。
#342Focusだけでもない。
#343Barkerのonline historyだけでもない。
#344映画を気に入った観客だけでもない。
#345それぞれがつながり、増幅し合った。
#346そして最終的に、すでに撮り終えていた映画が二人の人生をあとから追い越していった。
#347約75万ドルで作った映画が約5億600万ドルを稼いだ。
#348それだけ聞けば、十分に異常な話だ。
#349でも「Obsession」の本当に奇妙なところは、その巨大な最終数字だけではない。
#350公開された瞬間が最大ではなかったことだ。
#351初週末の約1,720万ドル。
#352普通なら、そこが頂点になる。
#353ところが映画はその後も伸びた。
#354つまり「Obsession」は、全員が公開前から知っていた巨大イベントではなかった。
#355映画館で上映されながら、あとからイベントになっていった。
#356見た人が誰かに話す。
#357その人がまた見に行く。
#358ネットで別の形になる。
#359また別の人が興味を持つ。
#360映画は公開されたあとに完成していくような動きをした。
#361それはBarkerの初期の作り方とも妙に似ていた。
#362まず作る。
#363世に出す。
#364誰かが見つける。
#365そこから次が始まる。
#366ただし今回は、規模だけがまるで違った。
#3672026年9月。
#368Barkerには、以前よりずっと大きな映画を作る選択肢がある。
#369NavarretteはRogueになった。
#370「Obsession」はHalloween Horror Nightsへ入り、Focus Featuresはawards seasonで作品を押し出している。
#371NavarretteはBest Actress。
#372BarkerはBest Director、Original Screenplay、Film Editingなどでcampaignされている。
#373まだnominationではない。
#374物語は続いている。
#375ただ、最初の場面と並べると、その距離は十分に大きい。
#376Starbucksで働きながら小さな映画を作るBarker。
#377「Obsession」を撮り終えたのに仕事がなく、犬を散歩させるNavarrette。
#378その時点で二人はまだ知らなかった。
#379未来を変える仕事は、もう終わっていたことを。
#380映画はすでにあった。
#381ただ、まだ見つかっていなかった。
#382最初に業界が見つけた。
#383次に観客が見つけた。
#384そして普通なら静かになっていくはずの公開2週目から、むしろもっと多くの人が見つけ始めた。
#385「Obsession」は、公開初週末で成功した映画ではない。
#386公開初週末から成功し始めた映画だった。
#387そして映画が大きくなるたびに、
#388すでに撮影を終えていた人たちの未来まで、
#389あとから大きくなっていった。
#39016歳で一人に近い形で作った奇妙なYouTubeホラーが爆発的に広がり、その映像の世界そのものがA24の長編映画へ変わっていった。は「Backrooms」というネット上の実験から、どうやってHollywoodの監督席までたどり着いたのか。